情シス部門に配属されてすぐ、先輩から「うちのシステムはAWSで動いてる」と言われました。でも当時の私には「AWS=Amazon=ネットショッピング?」という理解しかなく、なぜ通販会社がITインフラを提供しているのか、まったく意味がわかりませんでした。
同じように感じている方は多いのではないでしょうか。この連載では、AWSがどのように生まれ、なぜここまで普及したのかを5回にわたって解説します。歴史の流れを知ると「なるほど、だからこういう仕組みになっているのか」と腑に落ちる瞬間がたくさんあります。
AWSは「Amazonが自分たちのために作ったもの」だった
AWSの誕生は、Amazonが自社のIT問題に悩み抜いた結果でした。
2000年代初頭、Amazonはネット通販として急成長していました。毎年倍々で増えるユーザー、商品数、注文数。それを支えるサーバーやシステムも、どんどん増設する必要がありました。そこで3つの深刻な問題が起きます。
問題① 新機能を作るたびに「インフラ整備」から始めなければならない
Amazonは当時、おすすめ機能・レビュー機能・ショッピングカートなど次々と新機能を開発していました。しかし開発チームが「新機能を作りたい」と思うたびに、まずサーバーを用意し、ネットワークを設定し、ストレージを確保する……という作業が必要でした。
たとえるなら、「料理を作りたいのに、毎回ゼロからキッチンを建設しなければならない」ような状態です。
問題② サーバーの「もったいない問題」
ECサイトには年末年始・セール期間など、アクセスが集中する時期があります。この繁忙期に合わせてサーバーを用意すると、普段はサーバーの大半が「遊んでいる」状態になります。多い時期に合わせて用意したサーバーが、閑散期はほとんど使われない。でも電気代や維持費はかかり続ける。非常に非効率な状態でした。
問題③ チームごとにバラバラなシステムが乱立
急成長に伴い、開発チームの数も増えました。チームごとに「自分たちのやり方」でシステムを作ると、同じような機能をチームAとチームBがそれぞれ作ってしまう「二重投資」が発生。全体の整合性が取れなくなっていきました。
解決策:「社内共通インフラ」を作り、みんなで使い回す
Amazonが出した答えは「共通インフラを作って社内全体で使い回す」でした。
2002年ごろ、創業者ジェフ・ベゾスは社内に有名な「API Mandate(エーピーアイ マンデート)」という命令を出します。要約すると「すべてのチームは、自分たちのデータや機能を、外部から呼び出せる形式で公開せよ」というものです。
これにより、Amazonの社内は「サービスをモジュール(部品)として組み合わせる」仕組みへと変わっていきました。そしてこの共通インフラを整備する中で、Amazonの技術者たちはあることに気づきます。
「これ、Amazon以外の会社にも売れるんじゃないか?」
自社の悩みを解決した仕組みが、他社にとっても価値があると気づいた瞬間でした。
2006年、AWSが世界へ
「自分たちの悩みを解決した仕組み」が、世界を変えるサービスになりました。
2004年に社内向け実験を始め、2006年、ついに外部向けサービスとして「Amazon Web Services(AWS)」を正式提供開始。最初にリリースされたのは主に2つのサービスです。
- Amazon S3(Simple Storage Service):インターネット上にファイルを保存・取り出しできるサービス。「クラウド上の引き出し」です
- Amazon EC2(Elastic Compute Cloud):インターネット上でコンピューターを自由に借りられるサービス
「サーバーを自分で買わなくていい」「使った分だけ料金を払えばいい」という革命的な発想が、ここから始まりました。
今日からできること
- 自社のシステムがどこで動いているか確認してみる:クラウドを使っているなら、そのメリットが歴史から見えてきます
- 「AWSがなければ何が困るか」を想像してみる:インフラの重要性を実感できます
- 次回(第2回)へ進む:S3とEC2が実際にどんな衝撃を業界に与えたかを解説します
まとめ
- AWSは、AmazonがECサイト運営の「IT問題」を解決するために作ったシステムが起源
- 「インフラ整備の非効率」「サーバーのムダ」「チームの乱立」という3つの問題がAWSを生んだ
- 2006年にS3とEC2を外部提供開始。クラウドの時代が幕を開けた
「なぜAmazonがクラウドを作ったのか」がわかると、AWSの設計思想がすべて腑に落ちてきます。次回は、S3とEC2の登場が世界にどんな衝撃を与えたかを解説します。
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