【AWS歴史 第2回】「サーバーを買わなくていい」革命|S3・EC2が変えた世界

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「サーバーを自分で買わなくていいって、どういうこと?」

今では当たり前になったクラウドですが、2006年以前のIT業界では「システムを動かすにはサーバーを買う」のが常識でした。その常識を根本から壊したのが、AWSが2006年にリリースした2つのサービスです。

今回は、Amazon S3(Simple Storage Service)とAmazon EC2(Elastic Compute Cloud)の登場が、IT業界にどんな衝撃を与えたかを解説します。

2006年以前:「サーバーを持つ」のが当たり前だった時代

当時のIT担当者にとって、サーバーは「買うもの」でも「借りるもの」でもなく、「管理するもの」でした。

Webサービスやシステムを作りたい企業は、まず高額なサーバー機器を購入するところから始めます。それをデータセンターや自社のサーバー室に設置し、OSをインストールし、ネットワークを設定し……と、サービスが動くまでに数週間〜数ヶ月かかることも珍しくありませんでした。

情シス担当者の仕事の大部分は「このサーバーをどう維持するか」でした。停電対策、冷却設備、ハードウェア故障への対応……。「システムを動かす」ことより「サーバーを守る」ことに時間を取られていたのです。

S3の衝撃:「ファイル置き場」がクラウドに移った日

S3の登場は「データの保管場所」という概念を根本から変えました。

2006年3月にリリースされたAmazon S3(Amazon Simple Storage Service)は、インターネット上に大量のデータを保存・取り出しできるサービスです。わかりやすく言うと、「インターネット上にある巨大な引き出し」です。

それまで企業は、画像・動画・ログデータなどを保存するために専用のストレージ(保存装置)を購入していました。S3はそれを「必要な分だけ、使った分だけ課金」で提供しました。

料金は当初1GBあたり月0.15ドル(約17円)。初期費用ゼロ、容量無制限。この衝撃は、IT業界の人々には「ありえない」と感じられるほどのものでした。

EC2の衝撃:「コンピューターを借りる」という発想

EC2は「コンピューターは買うもの」という20年来の常識を壊しました。

2006年8月にベータ版がリリースされたAmazon EC2(Elastic Compute Cloud)は、仮想サーバー(仮想コンピューター)をインターネット越しに借りられるサービスです。

「仮想サーバー」というのは、1台の物理的なサーバーの中に、複数のサーバーが動いているような状態です。レンタルオフィスをイメージするとわかりやすいでしょう。大きなビルの中に、複数のテナントが独立したオフィスを構えているイメージです。

EC2の革命的だった点は3つあります。

  • 数分で使い始められる:従来は数週間かかっていたサーバー調達が、数分で完了
  • 必要なときだけ使える:繁忙期だけサーバーを増やし、終わったら削除。無駄なコストゼロ
  • 世界中から使える:地理的な制約なし。日本にいながら米国のサーバーを使える

誰が最初に飛びついたか?スタートアップ企業の革命

S3とEC2が最初に普及したのは、大企業ではなくスタートアップ(新興企業)でした。

理由は単純です。スタートアップは資金が少ない。でも大きなサービスを作りたい。そこに「初期費用ゼロ、使った分だけ払えばいい」というAWSが登場したのです。

たとえば、写真共有サービスのSmugmug(スマグマグ)は、S3リリース直後に採用し「ストレージコストが大幅削減できた」と公言しました。また、現在では世界最大の動画配信サービスであるNetflix(ネットフリックス)も、2008年ごろからAWSへの移行を始めます。

「大きなサービスを立ち上げるのに、もはや多額の設備投資は必要ない」——この事実が、世界中の起業家に希望を与えました。

情シス担当者として今日できること

  1. 自社でS3かEC2を使っているか確認する:多くの企業でこの2つが基盤になっています
  2. 「オンプレミスとクラウドの違い」を整理してみる:S3・EC2の登場前後で何が変わったかを考えると理解が深まります
  3. 次回(第3回)へ進む:AWSがGoogle・Microsoftを抑えてシェアトップになった理由を解説します

まとめ

  • S3は「データの保管場所」をクラウドへ移した。容量無制限・使った分だけ課金という革命的なサービス
  • EC2は「コンピューターは買うもの」という常識を壊した。数分で使い始められる仮想サーバー
  • 最初に飛びついたのはスタートアップ企業。初期費用ゼロが、新しいビジネスの可能性を大きく広げた

S3とEC2の登場は、「大企業だけがITに投資できる時代」の終わりを告げました。次回は、なぜAWSがGoogleやMicrosoftを抑えてトップシェアを獲得できたのかを解説します。


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