【AWS歴史 第4回】東日本大震災が変えた日本のIT|AWS普及の転換点

AWS

2011年3月11日。東日本大震災が発生したその日、日本中のIT担当者が同じ問題に直面しました。

「自社のサーバーが止まった」「データセンターへの道が寸断された」「バックアップが同じ建物にあって使えない」——。

私自身はまだ社会人になっていない時期でしたが、後に情シス部門へ配属されてから、あの震災が日本のIT業界をいかに変えたかを先輩から繰り返し聞きました。日本のクラウド移行を一気に加速させた「転換点」として、今でも語り継がれています。

震災前の日本企業:「オンプレミス」が当たり前だった

2011年以前の日本企業のほとんどは、自社内や契約したデータセンターにサーバーを置いていました。

「オンプレミス(On-Premises)」と呼ばれるこの方式は、「自社でサーバーを所有・管理する」形態です。メリットは「すべてを自分でコントロールできる」こと。デメリットは「何か起きたとき、すべて自分で対応しなければならない」ことです。

震災前の日本では「クラウドは便利かもしれないが、セキュリティが心配」「重要なデータを外部に預けるのは怖い」という保守的な意見が主流でした。大企業ほど、その傾向は強くありました。

震災が暴いた「オンプレミスの弱点」3つ

自然災害の前では、物理的なサーバーはあまりにも脆弱でした。

弱点① 物理的な被害に無力

建物が損壊すれば、中のサーバーも終わりです。停電になればシステムは止まります。地震・津波・火災。物理的なインフラはすべての自然災害に対して根本的な弱点を持っていました。

弱点② BCP(事業継続計画)の実態が追いついていなかった

BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、災害や障害が起きても事業を続けられるよう事前に備えておく計画のことです。多くの企業がBCPを「策定していた」ものの、実際にはバックアップのサーバーも被災地の同じエリアにあったり、復旧手順が現実的でなかったりと、機能しないケースが続出しました。

弱点③ リモートワークができなかった

社内のサーバーにしかアクセスできない環境では、オフィスに来られない状況でまったく仕事ができません。震災後の計画停電・交通機関の混乱・避難勧告……。「会社に来ないと仕事ができないIT環境」の脆さが浮き彫りになりました。

震災後の変化:クラウドへの「信頼」が一気に高まった

震災後、「クラウドは危ない」という意見は「クラウドの方が安全かもしれない」に変わっていきました。

被災地から離れたデータセンター(AWSの場合、日本リージョン以外にもシンガポールや米国にサーバーがある)にデータを預けていれば、地元の災害でデータは守られます。インターネットさえつながれば、どこからでもアクセスできます。

AWSは2011年3月に東京リージョン(ap-northeast-1)を開設しました。震災の直後というタイミングでの東京リージョン開設は、日本企業のAWS移行を象徴する出来事でした。

また、2013年には政府が「政府情報システムのクラウド化方針」を策定。行政のシステムにもクラウドを使う方向性が打ち出され、企業における「クラウドは信頼できる」という認識が加速していきました。

情シスの仕事が変わった:「守る人」から「設計する人」へ

クラウド移行は、情シス担当者の役割そのものを変えました。

オンプレミス時代の情シスは「サーバーを守る」仕事が中心でした。ハードウェアの交換、OSのアップデート、バックアップの確認……。しかしクラウドに移行すると、これらの多くはクラウドベンダーが担ってくれます。

代わりに求められるようになったのは「どのクラウドサービスをどう組み合わせるか」「セキュリティ設定をどう設計するか」「コストをどう最適化するか」という設計・判断の仕事です。私自身、この変化を感じているからこそAWSの勉強を続けています。

今日からできること

  1. 自社のBCPを確認する:クラウドをどう位置づけているか把握しておきましょう
  2. 「なぜクラウドを使っているか」を説明できるようにする:上司や経営層への説明に、震災の教訓は説得力があります
  3. 次回(第5回・最終回)へ進む:AIとクラウドが変える「これからの情シスの仕事」を解説します

まとめ

  • 東日本大震災は「オンプレミスの弱点」を一気に顕在化させた
  • AWS東京リージョンの開設(2011年)が日本のクラウド移行を後押しした
  • 情シスの役割は「サーバーを守る」から「クラウドを設計・判断する」へ変化した

災害という悲しい出来事が、日本のITを一段階進化させました。その流れの上に、私たちは今立っています。次回は、AWSの現在とこれからを解説します。


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