情シス担当者がLinuxを理解できない本当の理由|OSの歴史から整理する

情シスの仕事

「Ubuntu・CentOS・Amazon Linux……結局、何が違うの?」

情シスに異動してきた当初、先輩からそう聞かれて私は固まってしまいました。「Linuxって一種類じゃないの?」というのが正直な感想でした。

サーバーの調達や構築をベンダーに依頼するとき、「OSは何にしますか?」と聞かれて「えっと……Linuxで」と答えたら「どのディストリビューションですか?」と返されて頭が真っ白になった、という経験はありませんか?

Linuxの種類が多い理由を知らないと、サーバー選定のたびに迷い続けることになります。

この記事では、なぜLinuxにこんなに種類があるのかを、OSの歴史をたどりながら情シス目線でわかりやすく整理します。難しい技術の話ではなく、「なぜそうなったのか」という背景を理解することで、現場での判断がぐっと楽になりますよ。

なぜLinuxは種類が多いのか?問題の本質

多くの情シス担当者がやってしまいがちなのが、「Ubuntu vs CentOS、どっちが優れているか」という比較から入ることです。しかしこれは本質ではありません。

大切なのは「なぜこんなに種類が生まれたのか」という歴史的な背景を理解することです。背景がわかれば、自然と「この用途にはこのディストリビューション」という判断ができるようになります。

種類が多い理由は主に3つあります。

原因① Linuxがオープンソースだから

Linuxは誰でも自由に使え、改造して再配布できるオープンソースのOSです。レシピを公開している料理のようなもので、誰でもそのレシピをベースに自分流にアレンジして配布できます。その結果、世界中の開発者やコミュニティが独自のLinuxを作り始めました。

原因② 用途・目的に合わせて派生が進んだから

「サーバー用途に特化したもの」「デスクトップ向けに使いやすくしたもの」「組み込み機器向けに軽量化したもの」など、用途に合わせて派生バージョンが生まれました。同じ「自動車」でも、トラック・バス・スポーツカーと種類があるのと同じ発想です。

原因③ 企業・コミュニティがそれぞれ独自に発展させたから

Red Hat(レッドハット)やCanonical(カノニカル)のような企業、または世界中の有志コミュニティが、それぞれの判断で機能を追加・改良してきました。その結果、同じLinuxをベースにしながらも、性格の異なるディストリビューションが数多く生まれています。

「Linuxが多い」のは混乱の証拠ではなく、自由と多様性の産物なのです。

LinuxのルーツをたどるとOSの歴史が見えてくる

Linuxの多様性を理解するには、その生い立ちを知ることが一番の近道です。歴史の教科書のように難しくはないので、気軽に読み進めてください。

UNIX(1969年):すべての祖先

現代のOSのほぼすべての祖先が、1969年にAT&Tベル研究所で生まれた「UNIX(ユニックス)」です。「複数の人が同時に使える」「プログラムを部品のように組み合わせて使える」という革新的な設計で、研究機関や大学に広まりました。

ただしUNIXは有償で、使うには高いライセンス料が必要でした。「会社の金庫に鍵がかかっていて、お金を払わないと中を見られない」状態です。

GNU計画(1983年):「誰でも使えるOSを作ろう」

1983年、リチャード・ストールマンというプログラマーが「GNU(グヌー)計画」を立ち上げます。「誰でも自由に使えるUNIX互換のOSを作る」という壮大なプロジェクトです。

GNU計画によって、テキストエディタやコンパイラなど多くのソフトウェアが無料で公開されました。しかし肝心の「OSの中核部分(カーネル)」だけが完成しませんでした。

Linuxカーネル誕生(1991年):フィンランドの学生が世界を変えた

1991年、フィンランドのヘルシンキ大学の学生だったリーナス・トーバルズが、自作のカーネルをインターネットに公開します。「趣味で作っているOSがあるんだけど、使ってみる人いる?」という軽いメッセージとともに。

このカーネルがGNUのソフトウェアと組み合わさることで、「GNU/Linux」という完全な無償OSが生まれました。これが現在私たちが「Linux」と呼んでいるものの誕生です。

1人の学生の「趣味」が、現在の世界のサーバーの90%以上を支えるOSになるとは、誰も予想していませんでした。

ディストリビューションの誕生:Linuxを「使いやすく」パッケージング

Linuxカーネルだけでは、普通の人には使いにくいものでした。そこで「カーネル+各種ソフトウェア+インストーラー」をセットにしてパッケージ化したものが登場します。これが「ディストリビューション(distribution=配布物)」です。

レストランで言えば、「食材(カーネル)」だけでなく「調理済みの料理としてテーブルに出す(ディストリビューション)」イメージです。

主要ディストリビューションの分岐

現在のLinuxは大きく2つの系統に分かれています。

Debian系:Debian Linuxを祖先に持つグループ。Ubuntuが代表格で、個人・開発者・クラウド環境で広く使われています。パッケージ管理に「apt」コマンドを使います。

Red Hat系:Red Hat Linuxを祖先に持つグループ。RHEL(Red Hat Enterprise Linux)・CentOS・Rocky Linuxが代表格で、企業のサーバー環境で長く使われてきました。パッケージ管理に「yum」または「dnf」コマンドを使います。

情シス担当者は結局どれを使えばいいのか

歴史がわかったところで、実務的な話をします。情シスの現場では、用途に応じて以下のように選ぶのが定石です。

用途 おすすめ 理由
AWSのEC2 Amazon Linux 2023 AWSに最適化されており、サポートも充実
社内サーバー・検証環境 Ubuntu LTS 情報量が多く、初心者でもトラブル解決しやすい
エンタープライズ本番環境 RHEL / Rocky Linux 商用サポートが手厚く、安定性が高い

迷ったら「AWSならAmazon Linux、それ以外はUbuntu LTS」と覚えておけば、情シスの現場でまず困りません。

今日からできる具体的なアクション

  1. WSL2でUbuntuを触ってみる:Windows 11なら「wsl –install」コマンド1つでUbuntuが使えます。まずlsコマンドとcdコマンドだけ覚えれば十分です
  2. AWSの無料枠でEC2を起動してみる:Amazon Linux 2023のインスタンスを1台立ち上げてSSH接続するだけで、実感が大きく変わります
  3. ディストリビューションの系統図を1枚印刷する:「Ubuntu=Debian系」「CentOS=Red Hat系」という関係図を手元に置くだけで、会議中に迷わなくなります

Linuxは「難しいOS」ではなく、「歴史ある自由なOS」です。背景を知るだけで一気に親しみやすくなります。

まとめ

Linuxの種類が多い理由を、OSの歴史から整理しました。

  • Linuxはオープンソースのため、誰でも自由に改造・配布できる
  • 1969年のUNIX → 1983年のGNU計画 → 1991年のLinuxカーネル誕生という流れ
  • 現在はDebian系(Ubuntu)とRed Hat系(RHEL/Rocky Linux)の2大系統が主流
  • 情シスの現場では「AWSはAmazon Linux、それ以外はUbuntu LTS」が基本の選び方

「種類が多くて何が何だかわからない」というモヤモヤが、少し晴れたでしょうか。次のステップとして、実際にWSL2やEC2でLinuxを触ってみることをおすすめします。


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