この連載を通じて、AWSがどのように生まれ、世界に広まり、日本に根付いたかを見てきました。最終回となる今回は、2020年代以降のAWSの方向性と、これからの情シス担当者に求められることを解説します。
歴史を学ぶ意味は「過去を知ること」だけではありません。流れを理解することで、未来の変化を先読みできるようになります。
2020年代のAWSは「AI」へ大きく舵を切った
クラウドの「次」はAIです。AWSは今、AIをすべてのサービスの中心に据えています。
2023年、AWSはAmazon Bedrock(アマゾン ベドロック)をリリースしました。これは、Claude(クロード)・Llama(ラマ)などの大型AIモデルを、AWSのインフラ上で手軽に使えるようにしたサービスです。
わかりやすく言うと、「AIを自社のシステムに組み込むための部品箱」です。従来はAIを使うためにデータサイエンティストやAIエンジニアが必要でしたが、Bedrockを使えばAWSの操作ができるエンジニアがAIを活用したサービスを作れるようになりました。
「AIエージェント」が変えるシステムの姿
「AIが自律的に動いて仕事をする」時代が、すでに始まっています。
2025〜2026年、AWSはAIエージェント(自律的に判断・行動するAI)に関するサービスを次々と提供し始めました。前回の週間ニュースで紹介した「Bedrock AgentCore Payments」もその一例です。
AIエージェントとは、人間から「〇〇をして」と指示を受けたAIが、必要な情報を収集し、判断し、外部サービスを呼び出し、結果を返す——という一連の作業を自律的に行う仕組みです。
たとえば「来月の社内研修の候補日程を3つ出して、参加者に確認メールを送って」という指示をAIに出すと、カレンダーを参照し、メールを作成し、送信まで自動でやってくれる——そんな世界が現実になりつつあります。
AWSの歴史から見えてくる「変わらない原則」
20年のAWSの歴史を振り返ると、変わらない原則が見えてきます。
第1回から振り返ってみましょう。
- 第1回:Amazonは「自社の困りごと」を解決する仕組みを作り、それを外部に開放した
- 第2回:S3・EC2は「初期費用ゼロ・使った分だけ」という新しいコスト概念を生んだ
- 第3回:先行・値下げ・エコシステムで競合を圧倒した
- 第4回:災害という危機が、クラウドへの「信頼」を生んだ
すべてに共通するのは「現実の問題を解決することで、価値を生み出してきた」という姿勢です。AIも同じです。「便利そうだから」ではなく「現場の課題を解決できるから」使われていく——AWSはその流れを作り続けています。
これからの情シス担当者に求められること
情シスの役割は「なくなる」のではなく「進化する」のです。
よく「AIが普及すると情シスの仕事はなくなるのでは?」という声を聞きます。私はそう思いません。むしろ、情シス担当者の重要性は高まると考えています。
理由は3つあります。
- AIを「使わせる側」の判断は人間が行う:どのAIツールを社内に導入するか、セキュリティポリシーをどう設定するか——これは人間の判断が必要です
- 「AIが間違えたとき」に気づける人が必要:AIは完璧ではありません。出力を評価・修正できる知識を持った人が社内に必要です
- コスト管理はますます複雑になる:AIサービスの利用コストはわかりにくく、適切に管理できる人材が求められます
私自身がAWS SAAの勉強を続けているのも、「クラウドとAIが組み合わさった時代に、判断できる情シス担当者でいたい」という気持ちからです。
今日からできること
- Amazon Bedrockのドキュメントを一度読んでみる:難しくても「こんなものがある」と知るだけで十分です
- 「社内でAIをどう使うか」を考え始める:情シスとして先手を打てます
- AWS認定資格(Cloud Practitionerから)を検討する:歴史・仕組みを体系的に学べます
連載のまとめ:AWSの歴史は「変化に適応した歴史」
5回にわたってAWSの歴史を振り返りました。最後に整理します。
| 回 | テーマ | 情シスへのメッセージ |
|---|---|---|
| 第1回 | AWSの誕生 | 自社の課題解決がイノベーションになる |
| 第2回 | S3・EC2の衝撃 | 「持つ」から「使う」へのパラダイムシフト |
| 第3回 | クラウド覇権 | 先行・コスト・エコシステムが競争を決める |
| 第4回 | 日本での普及 | 危機が「変わる勇気」を与えた |
| 第5回 | AIとの融合 | 情シスの役割は「守る」から「設計・判断する」へ |
歴史を知ることは、現在地を知ることです。そして現在地がわかれば、次の一手が見えてきます。
この連載が、AWSを「なんとなく使うもの」から「なぜ使うのかがわかるもの」に変えるきっかけになれば幸いです。ぜひSAAの勉強も一緒に進めていきましょう。
前の記事:【AWS歴史 第4回】東日本大震災が変えた日本のIT|AWS普及の転換点
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